『パシフィック・リム』を観た

木場109シネマズでIMAX3D吹き替え版を鑑賞。たいへん面白かったし、サントラがやけに耳に残った。

監督本人も語っている通り、日本のアニメや怪獣映画から影響を受けているとのことで、各地で激賞の嵐。

ゴジラ』の本多猪四郎監督へのリスペクトが表明されているあたり、いわゆる東宝特撮、なかでもゴジラ映画からの引用は多く見受けられる。(※並んでリスペクトされているのが先ごろ他界したレイ・ハリーハウゼン。円谷特技監督への表明がないのは謎)
冒頭で漁船がKaijuに襲われるところなどはまんま『ゴジラ』だし、エメリッヒ版『GODZILLA』にも漁船が怪獣の餌食にされるシーンがある。(※ラストに出てくる黒幕エイリアンは心なしか『インデペンデンス・デイ』のあれにそっくりだ)怪獣への対抗手段を建造しているところから物語が始まる構造や格納庫内の描写は『ゴジラVSメカゴジラ』、輸送機に空輸される描写などは『ゴジラ×メカゴジラ』と相似している。香港へKaijuが上陸するシーンは『ゴジラVSデストロイア』を想起させる。戦っている途中で翼を広げるなんてのも、キングギドラや進化したデストロイアだし、黒目がなく感情移入を許さない怪獣といえば『GMK』版ゴジラの造型をイメージさせる。くどいほどにたたみかけるアクションや破壊で起こる満腹感は、デル・トロ監督のこれまでの作品にも見受けられたけど、それもやはり東宝特撮の影響が色濃いような気がする(だけかもしれないけど)。そして描写に不確かな要素はあるものの、原子炉を内包するイエーガーという設定や「被曝」と台詞で言わせるなどして、核や原子力の影響に言及している部分などもゴジラ映画、ひいては日本への目配せといっていいのではないか。
細かいところでは、香港戦の後で死んだKaijuから臓器を回収するシーンは、84年版『ゴジラ』を受けての『ゴジラVSビオランテ』の冒頭に通じるものがあるし、そこで回収される寄生獣は(84年版『ゴジラ』に登場した)ショッキラスを思わせる。


とはいえ、『パシフィック・リム』の場合Kaijyuと戦うのはゴジラではなく人間が乗り込むイエーガーであって、ゴジラのようにKaijuは主役になり得ない。Kaijuは完膚なきまでやっつけられる運命にあるからだ。その点において、『パシフィック・リム』は根本的にはゴジラ映画とは似て非なるものとして観た方がいい気がする。


パシフィック・リム』は毒とセックスを取り除いた『スターシップ・トゥルーパーズ』(以下『ST』)だと思った。思えば、ポール・バーホーベンが『ST』で採用しなかった原作「宇宙の戦士」のパワードスーツでもって、バグとひたすら戦う映画が出来上がっていたら、『パシフィック・リム』っぽくなったんじゃなかろうか。(無論スケールは違うけど)。『パシフィック・リム』では途中から軍隊ではなくなるが、誰もが怪獣を駆逐するためなら命を差し出す覚悟でいるし、感情移入を許さない挙動や見た目でなおかつブレインに操られているというKaijuの設定はバグスに通じ、鬼のような上官が登場するのも『ST』と一緒。特攻や自爆が許される世界といったらいいのか、映画冒頭からもうすでに有事の世界でそれが日常化しているというのも両作品で共通している。
違うのは『パシフィック・リム』には『ST』のようなどぎついシニカルさはなく、あからさまなセックスや人間のいやらしさも見せてない点。だからこそ物足りない気がしてしまう一方、逆にそれがないからこそ怪獣とロボットのガチンコ対決を思うままに堪能できるのも確か。

北米での興収はパッとしないものの中国では記録を塗り替える勢いで大ヒット中とのこと。劇中香港のシーンにさりげなく「タル通り」が出てくるように、リジェンダリー代表のトーマス・タルはアメコミや特撮ジャンルが大好きなんだと思う。
※2014年公開のハリウッド版『ゴジラ』もリジェンダリー制作。


ゴジラVSメカゴジラ』の予告編の音声を使った『パシフィック・リム東宝風ファンメイド予告