岡田君どこに出てんのよ?『太平洋の奇跡〜フォックスと呼ばれた男』

タッポーチョ 太平洋の奇跡 「敵ながら天晴」玉砕の島サイパンで本当にあった感動の物語 (祥伝社黄金文庫)

タッポーチョ 太平洋の奇跡 「敵ながら天晴」玉砕の島サイパンで本当にあった感動の物語 (祥伝社黄金文庫)

建国記念日公開の『太平洋の奇跡〜フォックスと呼ばれた男』。原作既読。
7月7日のバンザイ突撃などに見られるアフター・ザ・『プライベート・ライアン』な戦闘シーンは見どころ。小汚い恰好の日本兵や、米軍のキャンプ地等、美術もいい線いっているように感じた。ところが…
シナリオのせいなのか、竹野内豊演じる大場大尉(フォックス)をはじめとする日本軍の面々がいちいち「なんで?」という行動を取るので違和感が拭えない。まずもって日米の主役のどちらにも喜怒哀楽がなさすぎいまいち何を考えているのかが伝わってこない。そりゃ科白や出来事から筋を追うことはできるんだけれども、「大場さん、米軍にフォックスと呼ばれて恐れられるようなことや、残留する日本人から尊敬されるようなこと、何もしてないんじゃない?」と思わせてしまうつくりはどうなのか?「大場大尉はヒーローじゃない」という演出的意図なのかもしれないけど、それとこれとは別問題では?日本軍人は最後まで誇りを守ったけど、残留してた日本人は彼らのせいで苦行を強いられ、結果として多くの死傷者を出したとも見れてしまう。そんなこんなで、ラストの投降シーンが太平洋の陽光の下なのに、ひたすら寒々しく映った。
赤ちゃんを登場させ、大場大尉に「生きろ」と言わせるシーンの取ってつけた感が残念だった。原作では、自ら拳銃自決できず、残留兵を率いる決意に転じたという描写があったのに、映画にそのエピソードはなかった。ウィリアム・ボールドウィンはまだしも、トリート・ウィリアムズは何の性格的特徴もなく無駄使いでしかなかった。IMDBなんかだとかなり多くのボアが出てきそうで困る。
本作に限って言えばかなり惜しい出来。とはいえ、戦争映画がまだまだメジャーで作られるというのは喜ばしい事だと思う。