『グリーン・ゾーン』の外へ

誰もが結果を知っている。
『グリーン・ゾーン』は監督のポール・グリーングラスが『ユナイテッド93』と同様にすでに白黒ついている問題をスリリングに描いた(それこそ『ボーン〜』シリーズの主演であるマット・デイモンを配して『ボーン〜』風味の味付けをした)作品だった。
興味深かったのはやはり、グリーン・ゾーン内にいるジャーナリストたちの描写。占領地域でアメリカ政府の歓待を受けながら高官たちの発表を鵜呑みにし、ビール片手にプールでくつろぎながら情報を待ち、ブッシュのスピーチに疑いも抱かずに惜しみない拍手を送るその様が悪しざまに点描される。安全な場所に「隔離」されながら与えられたPCをいじっているだけだったことも暗に告発している。それこそが監督の真骨頂なのかもしれない。
やはりアクション・CGともにレベルが高く、何班体制で現場を回しているのか数え切れなかったぐらい予算もかかっている。しかし、政府べったりのジャーナリズムを信じてやまないアメリカ人にとっては耳が痛い事象なのか、本国ではあまりヒットしなかった模様。日本で例えるなら南京事件の映画に人が来ないようなものか(そもそも配給会社が二の足を踏んで公開していないのだが)。興行的な成否はともかくとして、この映画をある意味娯楽作品として提示できるワーキング・タイトル社とユニバーサル映画は今後も信用するに足る、と言っておくべきだろう。(『ホット・ファズ』の制作会社だしね!)

ただ…観終わった後だと、予告編は『ボーン〜』を意識し過ぎと思うよ。東和らしく本編が始まる前の字幕解説も親切設計すぎて泣けた…。